ZUU online magazine2019年9月号(7月20日発売)からお届けします。

現役ストラテジストとして活躍する傍ら、大学でも登壇し学生に向けて講義を行っている河合達憲さん。
ここでは、実際の投資に役立つストラテジー立案のヒントをお届けする。今回のテーマは、出口を見据えた投資戦略について。

近畿大学大学院・博士前期課程修了。日本で数少ない証券専攻修士号のマスター称号を有する。毎週火曜夜のオンラインセミナーが大人気を博し、テレビやラジオにも多数のレギュラー出演。2013年より大阪国際大学および大阪国際大学短期大学部にて大学講師としても登壇中。
いつまでにいくら増やすのか〝出口〝を定めることが肝心

マーケットを攻略して株式投資で利益を積み重ねていくうえで、あらかじめ〝出口〝のことを想定している人は意外と少ない。だが、最終的にいつごろまでにいくら増やし、その後は巡航速度の運用にシフトするのかという道筋を定めておくことはきわめて重要だ。それがあってこそ、どんな方針でどういった投資を行うべきかが決まる。
今から投資を始める人はもちろん、すでに取引を重ねている人も、あらためて自分なりの〝出口〝について考えてもらいたい。そのために、今回の資料として提示したのが下記の複利表だ。年率10~50%で、1000万円の元手からスタートし、どれくらいのパフォーマンスで何年間の運用を行えば、〝億り人〝となれるのかを示している。
たとえば、20%のパフォーマンスなら13年、30%なら9年で〝億り人〝になる。ここで強く訴えたいのは、年率10%を想定している人と年率50%を狙っている人では運用のスタンスが根本的に違ってくるということだ。10%程度なら比較的ムリなく得られる一方、50%を達成するためにはかなりリスキーな銘柄に突っ込む必要が出てくる。
では、特に〝出口〝を意識しておらず、考えてみてもピンとこないという人は、どこを目指せばいいのか?
過去の株式市場のパフォーマンスから判断して、年率20~30%程度がムリのないレベルだ。その場合、複利表が示すように9~13年目が〝出口〝となるので、50代でスタートしても60歳前後には、〝億り人〝になっている算段だ。
だとすれば、具体的にどんな銘柄を攻略すればいいのか。実は日経平均の年間の平均高安比は概ね35%で上下している。とはいえ、その大底で買って天井で売るのは神業級で、せいぜい10~15%程度の利ザヤを抜くのが精いっぱいだろう。これに対し、個別銘柄は経験則から判断し、平均的に株価指数の2倍前後の値動きがある。したがって、個別銘柄に的を絞りつつ、20~30%の利ザヤを追求するのがメインの戦略となる。その際、株価の先行きを見定めやすいという観点で、日経平均と同じような方向性で、なおかつ変動幅はそれをしのぐ銘柄に着目したい。
また、日経平均では10~15%程度の値幅を狙うのが限界値でも、その約2倍のパフォーマンスを期待できるレバレッジETFやインバースETFも視野に入ってくる。ただ、日経平均を上回る運用を目指すうえで求められてくるのは個別銘柄の研究だ。さらに言えば、バイ&ホールドは成長株だけに成立する手法で、ほかでもそれを実践すると売りのタイミングを逃しかねない。

