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日銀がETF買いを変更!?注目は225非採用の優良株

これまで、年間6兆円の購入枠で日経平均株価を支えてきた日銀のETF?上場投信?買い。しかし、一方では"日銀買い"の弊害を指摘する声も上がっている。そろそろ日銀がETF買いのルールを変更しそうだ。

6兆円は据え置いて、購入銘柄を変更へ!?

ロン●9月21日は、日銀総裁の記者会見に行ってくるよ。日銀がETF買いの方法を変更するかもしれないんだ。

芦田●ETF買いをやめちゃうの?

竹内●年間6兆円の購入枠は据え置いて、購入銘柄を変えるようです。正確には、変えざるをえないはずです。金額が大きいだけに、個別銘柄にも影響しますよ。

芦田●今年はちょっと円高気味だけど、日経平均株価が2万円を回復したし、ETF買いは大成功。なのに変える必要があるの?

ロン●日銀はデフレ脱却まで金融緩和政策を続ける方針だから、本当はETF買いも今のままでいい。ところが、ETF買いの弊害が無視できなくなってきたんだ。

竹内●日銀は昨年7月にETF購入枠を3兆3000億円から6兆円に拡大しました。このペースで買い続ければ、2019年8月には30兆円に膨らむ計算ですが、その前に特定の銘柄が市場から消えてしまいそうなんです。

芦田●日銀がETFとして株式をどんどん吸収するから、市場で売買される株式は減る一方だもんね。

竹内●典型的なのはファーストリテイリング。日経平均の1割近くがこの銘柄で決まった時期もあるので、ETF買いの指標でもあります。東証の売買代金ランキングを作ってみたら、ファーストリテイリングは2014年に7位、2015年に8位、2016年に7位と、大商い銘柄でした。ところが今年は売買が細って、7月末までのデータではベスト10から脱落しました。

ロン●ファーストリテイリングは創業者の柳井正さんと親族の保有株が多くて、これは市場に出てこない。市場で売買が可能な浮動株はかなり少ないんじゃないかな。『会社四季報』の浮動株比率が空欄になっているのは、『会社四季報』の調査に回答していないからだろう。

芦田●日銀の黒田東彦総裁は「ETF買いが副作用を生んでいるとは思わない」って、何度も発言してるけど…。

ロン●東証を運営する日本取引所グループの清田瞭CEO(最高経営責任者)は7月28日の定例会見で「長期的に続けるべきではない」と批判的だった。ETF買いで「株を売った投資家がまた買いたいと思う水準に株価が下がらなくなった」とも指摘していた。

竹内●このままETF買いを続けると、来年の今ごろはアドバンテストの筆頭株主です。日銀は2割近い株を保有し、本来なら連結決算に反映させる必要があるほどです。

ロン●政府内でも少数だけど異論がある。金融庁がスチュワードシップ・コード(機関投資家の行動原則)を作って株主と企業との緊張感ある関係をつくったのに、筆頭株主がモノを言わない日銀では、金融庁の政策と整合性がない。

ETF買いは長期戦。TOPIX型を増量か

芦田●ETF買いルールをどう変えるの?

竹内●昨年9月からETFの購入比率は日経平均型が3割、TOPIX(東証株価指数)型が7割です。今年9月で現行の購入方法が始まってからちょうど1年が経過します。制度変更のタイミングとしてはピッタリってことですね、ロン隊長?

ロン●日銀は、政策変更から次の政策変更まで「政策の効果を見極める」って理由で間隔を空ける傾向があるんだ。

ETF買いルールをいじるとすれば、日経平均型を減らして2対8にするのが現実的だ。TOPIXに一本化する手もある。225銘柄だけを買う日経平均型より東証1部全銘柄を買うTOPIX型のほうが1銘柄への影響が小さくて済むからね。

芦田●日銀は「プラス2%」の物価目標を6回も先送りしたから、ETF買いも持久戦は覚悟ってわけね。長く続けられる方法を採用するのは当然かな。

竹内●6兆円の枠を変えなければ、株価の下支え効果も維持できます。日銀がETFを通じて間接的に買い集めた株式は当分、市場に出てこないので、これからも下がりにくい相場になりますよ。

芦田●日銀マネーが入ってくるのは、日経平均に採用されていない大型株かな?

竹内●その通り。任天堂や日本電産、オリックスあたりの日経平均非採用の優良大型株がTOPIX型ETFというパッケージで買われます。

芦田●機関投資家の定番保有銘柄とも重なるわけね。

個人投資家の懐具合はかなり改善!だからこそ個人投資家は「急落」を待っている?

日経平均は2万円付近で動きも鈍く、全体の商いも減っています。逆に言えば、売り物が減って、下がりにくくなったとも。個人投資家の待機資金はかなり潤沢になっています!

せっせと買い続ける日銀、せっせと売る日本の個人

岡村●日経平均株価、全然下がらなくなってますね。

暖田●下がらないけど、上がってもいない。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)は史上最低だからな。

涼川●日経平均でいえば、6月5日以降、終値で前日比1%以上変化した日がないんだ。さらに言うと、週間変化率でも1%未満の状態が9週続いている。

暖田●翌日の変化が期待しづらいから、オーバーナイトする投資家も減る。当日中にポジションを閉じる投資家が増えて、1日の値動きが小さくなっているよね。

岡村●いろんなメディアが最近指摘し始めましたが、日銀によるETF(上場投資信託)買いが一番の理由ですよね。

涼川●それはそうだよ。前場に下落すると、後場に日銀買いが見えてくる。そうなると、下げる日も大崩れしないと読める。今は年間で6兆円の枠があって、1回当たり700億円超と規模が巨額。日銀がにらみを利かせているわけだから、「下げるだろう」という相場観を持つ売り方も戦意を喪失するよ。「売ってもムダだな……」と。

暖田●この政策の是非はともかく、株価を高く維持してくれてるおかげで、日本の投資家に株の売り場は提供してくれたよな。

岡村●個人投資家の週間売買動向を見ると、「売り越し」ばかりですもんね。

涼川●今年に入って、6月末までの半年における最大の売り手は個人投資家。合計で2兆円以上売り越してる。外国人投資家は大きな動きなし。じゃあ誰が一番買っているかとなると、日銀なんだよね。この期間に2・9兆円もETFを買ってる。

岡村●個人から日銀へ株のバケツリレーが起きたと……。個人は株を現金化したわけですから、手元資金がかなり潤沢になったといえますね。

マザーズまで急落が減る。これも“日銀効果"

暖田●その個人は、手元資金でマザーズやジャスダックの株を買ってるね。手元資金はあるから、下がったら買いたいと待ち構えている人は多い。ただ、日経平均は下がらないから、下がった個別株を買うというスタイルが出来上がってるといえるよな。

岡村●リバウンド狙いは個別株ということ?

暖田●そう。その証拠に、東証マザーズ指数でおもしろい現象が起きてる。マザーズ指数の大幅安の基準を2%以上の下落としたら、今年は11回。その11回とも、翌日はリバウンドしてるんだ。

岡村●それは意外! マザーズといえば、大きく下がると一気に個人投資家のポジションが痛んで、しばらく調整することが多かったですよね?

暖田●俺もマザーズの大幅安を見ると、「下げの兆候か?」と思ってしまう習性があった。

涼川●そういう下げ一発で、すぐに拾い場と考えて動く個人投資家が多いんだね。

岡村●指数で2%程度の下げで、直後にリバウンド。これが続いているから、ストレスはかなり小さいですね。日銀ETF買いの成果がこんな形で表れてるのか(笑)。

暖田●あとは、こんなことまで起きてる。新興市場は信用取引による売買比率が高いから、信用評価損益率を見るのが大事。一般的にみんながチェックする買い方のデータは、足元では改善している。これは当然、株価が堅調だから。おもしろいのが、売り方の信用評価損益率なんだ。これがナント、7月第1週にプラスになったんだ!

岡村●日経平均が高値圏にありながら売り方がプラス?

暖田●そう、非常にレアケースなんだ。株高の地合いにあって、売り方の損益率がプラス。その理由は、カラ売りの多かった銘柄がうまく下がり始めたから。

岡村●カラ売りが多いのは、割高株ですよね。

暖田●米国でハイテク株が下がった6月中旬あたりから、日本でも同じように割高なグロース(成長)株の流れが悪くなった。あとは債券の代替で買われていたようなディフェンシブ株も売りが目立ち始めた。これらがかみ合って、買い方も売り方も損益状況がよくなったんだ。

岡村●コンディションは最高ですね。もう、「いつでも押し目、来てちょーだい!」と。

涼川●「急落を待っている」、そんな話なかなか聞けないな。

暖田●そんな環境が整ったときに限って、急落って来ないんだけどね……。