ネットマネー 2017年10月号より一部を特別公開!

先んじて他社を制し“高付加価値”を維持

AI、IoT、フィンテック…次々と新しい技術や概念が台頭、ハイスピードで変遷する国内外で、ITインフラの担い手に求められるニーズは大きい。「安売りはしない」と公言しつつそれに十二分に応え、高い収益を継続しているのが、独立系システムインテグレーターのコムチュアだ。

取材・文●西川修一 撮影●小原孝博

クラウド事業を拡大するほか、新技術へのいち早い先行投資に意欲的。今期は5期連続ROE20%超、8期連続増収&7期連続増益を目指す

大手顧客700社超。「付加価値が低い仕事は一切やらない」

「安い仕事はやりません。できるだけいい仕事をして、それなりの報酬をいただきます」

コムチュアの向浩一会長は、大胆にそう言い切る。

「『値上げをする』と堂々と公言しているのは弊社ぐらい。社員の給与アップと株主満足度を両立させるには、仕事の付加価値を上げることしかありません」(向氏、以下同)

コムチュアは独立系SI(システムインテグレーター)。BtoB(企業間取引)の4事業を手がけるが、クラウドコンピューティング(以下、クラウド)上の企業向けソリューションサービスを得意とする。いち早くこの分野に進出し、M&A(企業の合併・買収)と相まって一定のポジションを築き上げた。

「コンピューターの処理速度が格段に進化したことで、ビッグデータ、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、フィンテック(金融とテクノロジーの融合)は今後ますます進化し、それが結果的にクラウドにもつながります。そういう背景をしっかり捉えて新しいものにチャレンジする。そういう発想の下、われわれは右肩上がりで成長してきました」

JPX日経中小型株指数を構成する200銘柄のひとつ。2018年3月期は2ケタ増益と13期連続の増配を見込んでいるほか、ROE(自己資本利益率)20%以上を前期まで4期連続してクリア、海外投資家からも注目されているという。

「IT界隈では、今やクラウドは当たり前。クラウド環境におけるビッグデータ、AI、IoT、フィンテックの技術を使ってお客さまのニーズに応じたソリューションの提案を行ない、かつお客さまに代わって運用します」

顧客の705社(2017年6月末現在)は、もっぱら大手企業ばかりだ。

「今や〝総データ分析社会〟。ユーザーデータ、過去データをいかにうまく使って将来予測、売り上げ予測をするかがカギとなります」

コムチュアが手がけるサービスの実例を挙げると、米国アマゾンのウェブサービスを利用したクラウドサービスや、大手銀行の犯罪関連口座の早期検知システム、ANA系航空会社ソラシドエアの座席予約システム、大手スーパーチェーンの店舗から上がってくる食品クレームを見える化する管理システム、千葉県鎌ケ谷市のゴミ処理を一元管理するソリューション等々、多岐にわたる。

アイデア次第で、市場が無限に広がりそうな期待感がある。それだけに、金融機関や大手メーカーの従来型の基幹システムについては、「古い技術。予算配分の伸びが年に数%程度と低く、付加価値が低いので一切やりません」。

そもそも金融業界は、「データのありかがわからない」などと自社システムのクラウドへの移行には消極的で、自前のコストでデータ管理を続ける旧態依然ぶりだった。

しかし、それらが古臭い発想であることが徐々に浸透し、むしろパブリッククラウドを含めたもののほうが、セキュリティー上かえって強いことも認知されるようになった。

「新技術は早すぎてもダメ、皆がやり始めてからでもダメです」

「今、新しい分野に関する大手企業・金融機関のIT関連予算は年20%、30%、ものによっては2倍の伸びを見せており、そこに入っていくことがわれわれの成長につながる」

そこで向氏は、冒頭のような「高付加価値戦略」を公言し、意識的に収益性の向上を図っている。

「提案力・サービス・生産性の向上で1人当たりの売り上げを毎年5%アップを目標としています。3%を社員に、1%を絶えず必要である先行投資に、残りの1%を株主さんに。この配分が正しい経営だと思っています」

大手企業はどこもクラウドのようなITの新しい流れと、既存の古いシステムとの兼ね合いに悩む。コムチュアはその移行策を提案している。

「かつて2000年問題に際して、〝ほどけぬスパゲッティ状態〟となったシステムをどうするかの議論があったんですが、そこにずっと触らずにいるうちにクラウドの時代が来た。乗り換えるには費用がかかりすぎるので、従来のホストコンピューターはそのまま塩漬けにしておき、クラウドで外付けしていきます。ただ、そう言いながらも持ち出せるものは外に持ち出しつつ、ある程度の時間をかけて新しいクラウド環境をつくっていきます」

クラウドの〝旬〟はまだまだ続く、と向氏はみている。

「2~3年で終わるということはありません。まだまだ先は長い。ビッグデータにいたっては、今年が元年。あと5~ 10年は続くと思います」

新技術の追求に貪欲なのはいいとして、そこにははやり廃りがついて回るものだが、コムチュアの真骨頂は、「うちはオーナー色の非常に強い会社(笑)」と自ら説明する向氏自身の先見性と動きの機敏さにあるようだ。

「新技術は早すぎてもダメだし、皆がやり始めてからでもダメ。タイミングが難しい。一過性のブームなのか、それとも中長期のトレンドなのかの見極めも大切。経験に基づく先見性が必要です」

今年3月、欧州を歴訪した安倍晋三首相に随行した向氏は、ドイツのメルケル首相とのパーティーにも出席し、その足で英国ロンドンのケンブリッジ大学を訪れ、ITの世界潮流を目の当たりにしたという。

「フィンテックは世界的な潮流。もうはっきりしています。さっさとやるしかない。やるかどうかを考えてる場合じゃない。いかに乗り遅れないかということです」

ビッグデータ資格を取得した新卒20名が3年たって花開いた

では、何をどう「さっさと」やろうとしているのか。

「これまでは、注文されたものを『つくる』会社でしたが、もっと上流の領域にいきたい、つまりお客さまにもっと新たな提案ができる、部分ではなく全体を請け負う一気通貫型のサービスを提供できるようになりたいですね」

新しい領域については、顧客が何かやりたいと考えていても、「何ができるか」がわからない。こちらから「こんなことができます」と提案できれば、付加価値の高いビジネスが期待できる。そのためには、相応の新技術をいち早く習得しておく必要がある。

「3年前に採用した新卒40名のうち20名に、入社3カ月でビッグデータに関する資格を取らせました。当時はビッグデータのニーズに誰も気づいていなかった。必要なのは解析の手法。物事の手順をロジカルに追うプログラミングとは頭の働かせ方がまったく違うので、技術者を別個に育成する必要がありました」

それから3年がたち、このメンバーがIBMのAIコンクールに出たり、さまざまな解析ツールを習得してコンサルティングを行なうなど、花開いたという。こうした先行投資を絶えず行ない、ユーザーの新しいニーズを捉えながら対応する。すると、おのずと付加価値が上がる―、このサイクルが恒常化しているという強みが、高速で変遷する事業環境の中でますます生きていきそうだ。

COLUMN 持続的高成長で目標株価 6715 円

グループウェアソリューション事業では国内トップクラス

独立系ITベンダー。クラウドやビッグデータ、グループウェア・ワークスタイル改革、フィンテック・金融ソリューションなどを手がけ、グループウェアソリューション事業では国内トップクラス。M&Aによる事業拡大にも注力。

中期経営計画では、2020年3月期に売上高190億円、営業利益21億円を展望しており、会社側は売上高、営業利益ともに年率2ケタ成長を意識している。現在、7期連続過去最高益更新を見込んでおり、向会長の強力なリーダーシップとクラウド事業の拡大で持続的な高成長が期待できそうだ。

直近では、ソラシドエア向けAI活用の航空機座席販売割当など、航空会社向けの案件も伸長。長期的な目標株価として、4月の安値3450円から6月の高値5440円までの上げ幅1990円を、直近安値4725円に足した6715円とみておきたい。