ネットマネー 2017年10月号より一部を特別公開!

アマゾンによるホールフーズの買収が発表されて以降、株式市場では多くの小売銘柄の株価がさえない。
なのに、アマゾンや食材宅配のブルーエプロンなど、EC銘柄は好調だ。
EC企業には、在庫管理から需要の掘り起こしまで役立つ、数理的かつ膨大な情報解析力がある。
市場は「勝負あった」とみているのだろう。

最近のM&A(企業の合併・買収)で市場に衝撃を与えた案件といえば、
米国のEC(電子商取引)最大手のアマゾン・ドット・コムによる、
米国食品スーパーのホールフーズ・マーケットの買収だろう。

破竹の勢いで市場シェアを拡大する「ECの雄」に「自然食品販売の先駆け」。斬新な企業文化で知られる両社だが、「デジタル」が「リアル」をのみ込むという歴史的な意味合いがある。

ホールフーズは1980年に創業した。漂白や防腐剤が当たり前だった当時では珍しい、有機栽培野菜を販売するスーパーとして名を売り、米国で400店舗以上を構える大手に成長した。

食品小売りは難しい商売だ。流通段階で1割の商品が傷む。薄利多売でもある。だが、ホールフーズは地元産の野菜を優先的に購入し、生産者の有機栽培を支援する。ブランドを確立することで、同業他社より厚めの利ザヤを稼ぐ。

だが、ここ数年は過当競争で疲弊している。7月末に発表した2017年第3四半期では、米国経済が好調なのに減収だった。

今や、どのスーパーでも健康食品や有機栽培の野菜を取り扱っている。ホールフーズは株価が低迷し、もの言う株主も登場。そこで、身売りを決めたわけだ。

一方のアマゾンは会員プログラム「プライム」が売り上げを引っ張り、年率15%で成長するEC市場でのシェアが4割を超える。アマゾンはホールフーズを買収することで、2025年には現在の4倍に拡大するとされる米国オンライン食品市場の橋頭堡を得た。

アマゾンによるホールフーズ買収が発表された6月半ば以降、市場では多くの小売りがさえない。なのに、アマゾンや食材宅配のブルーエプロンなど、EC銘柄は好調だ。

通常、M&Aが起きると、買い手側の株価は下げ、売り手側の株価は強含みになる場合が多い。歴史的に、払ったプレミアム以上のシナジー効果を上げることができない買い手が多いためだ。

だが、アマゾンによるホールフーズ買収では逆だ。売り手の小売株は軟調相場が続いており、買い手業界は堅調である。要は、市場が「勝負あった」とみているのだろう。

アマゾンのようなEC企業にあって「リアル」の小売りにないのは、在庫管理から需要の掘り起こしにまで役立つ、数理的かつ膨大な情報解析力である。大手デパートなど多くの小売業者がデジタル販売を強化しているが、経営のDNAがIT(情報技術)ではないので、システム開発が屋上屋を重ねている。

アマゾンは無人店舗を模索しており、雇用減を気にする米国議会はアマゾン関係者の招致を求めているが、流通に合理化は時代の流れだ。先行投資を重視しているので利益は出ていないが、減価償却前の利益で見ると、アマゾンはあらゆる小売業を凌駕している。株価、財務諸表、市場シェアといったデータを見る限り、市場の見方にはうなずける。小売業界においては、「勝負はあった」のだ。