ネットマネー 2017年10月号より一部を特別公開!

株式市場にとって正常な姿とは何か

日銀のETF(上場投資信託)の保有額は17兆円を超えた。毎年6兆円ずつ購入すると言っているから、あと3年ほどでGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の日本株保有と並んで最大の株主に躍り出ることになる。株式市場では“ETFさまさま"といった歓迎ムードにあふれているが、これは、どう考えても日本株市場にとって「行きはよいよい帰りは怖い」の悪夢となるだろう。将来の火種となるのは間違いない。

ETFを大量購入しても日銀は個別企業のリサーチができていない

そもそもETFというものは、それを構成している銘柄群が玉石混交で、業績不振の企業もあまた組み入れられている。

そのため、日銀が大量に保有しているETFをいざ売ろうとしたら買い手はつかず、株価全般が奈落の底へ沈んでいくのは必定だ。そのころには黒田東彦日銀総裁はいないだろう。だから気楽に購入しているのかもしれないが、相当に無責任であるといえる。将来の火薬庫をせっせと膨らませているからだ。

では、どうせ売れないんだったら、日銀はどんどん買い増しているETFを永久に保有するのかといえば、それはありえない。“通貨の番人"である日銀が価格変動の激しい株式を大量に保有していると、財務の健全性に黄信号がともったままとなり、それは日銀の信用力低下の状態が続き、その先に控えているインフレを招きかねない。

一方、国は企業のガバナンス(統治)を強化させ、機関投資家のスチュワードシップ・コードを徹底させようと指導している。スチュワードシップ・コードとは、企業には「社会的な存在としての意識と責任感を高めさせ、もって経済の健全なる発展に資するべし」とし、機関投資家には「資金を預けてくれる投資家に対する運用者責任と、投資対象企業の健全かつ持続的な発展に向けての株主責任を果たすべき」としている。

このどちらにも、日銀のETF購入は逆行している。先にも述べたように、ETFは上場している企業を全部ごっちゃにしているわけで、その中にはダメ企業もゾンビ企業もひとまとめに組み込まれているのだ。

それは、企業のガバナンス状況を問い、不適格なら投資しない、むしろ売却するといった“淘汰の機能"を発揮することができないことになる。

また、大株主としてどれだけ議決権行使をするのかということにもなる。ETFを大量購入しても、個別企業のリサーチができないというのは、大株主としてどうなのか。釈然としないものがある。

将来の火種を抱え込む日銀によるETF購入は即刻ストップすべきだ

政府にも大いに責任がある。企業のガバナンスとかスチュワードシップ・コードを順守するよう指導しながら、その横で日銀がそれらを無視するかのようにETFの購入を進めているのに、何の異議も唱えていない。

日銀が大量に購入しているのも、株価を押し上げて景気浮上を図りたいからだ。それならそれで、もっと賢い手法をとるべきだろう。

将来の火種を抱え込むことになるだけのETF購入など即刻ストップし、その代わりに日本株をターゲットにした競争運用をさせればいい。具体的に説明してみよう。

投信会社と一定運用額以上の資産を持っている投資一任業者に、日本株市場での現物株運用コンペの参加を募る。条件は、初年度の四半期ごとに1・5兆円を均等割りした資金を参加各社に配分する。翌年度以降は、累積の成績に準じて配分額に傾斜をかける。

運用内容や成績動向は、日銀のホームページで常時オープンにして、運用コンペの透明性を確保することで、参加各社の競争意識をあおる。

年に6兆円もの資金を各社で競争運用させれば、日本株市場は質のいい株価上昇トレンドを描くことになる。現在の玉石混交のETF購入より、はるかに株価上昇率は高まることになるだろう。

機関投資家による日本株運用の約80%がインデックス先物投資に

その一方で、将来の成長性に不安な企業などは見向きもされず、市場から淘汰を促され、そこでも質のいい株価上昇が期待できる。もちろん、個別株を丁寧にリサーチしたうえでの運用となるから、国が主導している企業のガバナンスや機関投資家のスチュワードシップ・コードも順守されることになる。

何よりも、オープンコンペ参加各社は、将来性のある企業を中心にポートフォリオを構築するから、将来どこかで保有株を売りに出すときでも、売却の問題は生じない。ETFと異なり、個別株だからいくらでも市場が受け入れてくれる。そのうえ、日本株運用のコンペ投信会社や投資一任運用業者の企業リサーチ能力を大幅に向上させるという、素晴らしいおまけもついてくる。

最近は、機関投資家の日本株運用の80%前後がインデックスの先物に移ってしまっているといわれる。インデックス先物ならば、景気や金融動向などマクロ指標の反応する運用が主体となり、企業リサーチ力はどんどん低下していく。そんな状態を続けていては、スチュワードシップ・コードもへったくれもあったものではない。対して、日銀による日本株の現物株運用コンペなら、企業リサーチ力が成績に直結する。だから、いや応なしにアナリストの力がついていくわけだ。

株価の上昇、将来の売却不安もない、日本の運用会社の企業リサーチ力を高めるなど、いいことずくめである。黒田総裁にとっても、素晴らしい置き土産となるのは間違いない。繰り返すが、将来に禍根を残すだけのETF購入など即刻ストップし、日本株の運用コンペに切り替えるべきだ。