ネットマネー 2017年10月号より一部を特別公開!

再任か交代か。次期FRB議長の人事に揺れる夏の米ドル

トランプ政権とFRBの対立が浮き彫りとなる中、次期FRB議長の人事に注目が集まっている。投資家心理を示すVIX指数が、歴史的な低水準に位置しているのも不気味だ。

次期FRB議長の人事をめぐって、米ドルが大きく動く

20・8%―。これは7月中旬に米国の経済紙が行なったエコノミスト調査でのイエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長再任の可能性だ。

当時、イエレン議長は、トランプ政権が掲げる3%の経済成長に対し、「達成はきわめて難しいと思う」と、議会で証言した。「今回が議長として最後の議会証言になるのか」との記者の問いに対しては、「そうかもしれない」と返答。この覚悟を持ったような姿勢は、トランプ政権との鮮明な意見対立にも映った。

前後してトランプ大統領は、FRB副議長(金融規制担当)に元財務次官のクオールズ氏を指名する人事を発表。また、議長候補として、国家経済会議委員長のコーン氏が浮上した。そのほか名前は挙げなかったものの、まだ候補がいるとし、年末までに決定する考えを示した。

トランプ大統領の意向を反映させるFRB人事への介入は明確であり、トランプ政権と現在のFRB執行部との対立姿勢が一段と鮮明になる動きには要警戒だ。理由は1つ、市場対話力である。たとえば、歴代FRB議長は、2期8年以上の長期体制を敷くケースが多く、不動の金融政策は米国金融市場を支えてきた。しかし、イエレン氏を1期で交代させれば、デフレ脱却や米国株が歴史的高値に評価されている中で、強引なFRB議長への処遇、FRBへの介入と映りかねない。

少なくともイエレン退任となれば、過去の量的緩和で膨らんだFRBの保有資産の縮小に着手する構えや利上げ路線の無定見性はいっそう強まることになるはずだ。再任もしくは交代といった、2通りの“トランプカード”の切り方次第で、今後の米ドルは大きく揺れ動く可能性がある。

足元では、投資家心理を示すとされるVIX指数(恐怖指数)が、歴史的な低水準で静けさを漂わせている。不気味なマグマを秋に向けて蓄積させているのではないか、心配でならない。

米ドル/円のボックス相場はオシレーター系指標で攻める

今年に入って膠着状態の米ドル/円。4月以降は108~114円の非常に狭い値幅を上下動している。相場の天底を捉えるのに有効なオシレーター系指標の組み合わせとは?

指数を組み合わせて米ドル/円の天底を捉える方法

為替レートは上下動を繰り返していますが、そのピークやボトムを予測できれば売買しやすくなります。そんなときに役立つテクニカル指標が「オシレーター系」に属する「ストキャスティクス」(以下、STC)です。その特徴は、値動きが過熱しているか低調かを一定の数式を用いて0~100の間でパーセンテージ化すること。STCの場合は、ある期間の最高値を100%、最安値を0%としたとき、現在レートが何%かを示す「%K」と、その移動平均「%D」「Slow%D」で相場の強弱を判断します。

100%に近いと買われすぎなので売り、0に近いと売られすぎで買い、と逆張り指標として使うのが一般的です。

ただし、値動きに強いトレンドが出ると使いにくいのがSTCの弱点です。そんなとき補強テクニカルとして有効なのが「カイリエンベロープ」(以下エンベロープ)。移動平均線からのカイ離率を上下2本の線で示した指標です。

下段・上の図は米ドル/円の日足チャートに、STCと20日移動平均線から上下に2%カイ離したエンベロープを表示したもの。「STCの買われすぎ圏からの下落、売られすぎ圏からの上昇」と「為替レートのエンベロープ外側から内側への戻り」が同時発生したところが、相場の天井と底をうまく捉えています。

今年4月以降の米ドル/円は、高値114円、安値108円という非常に狭いボックス相場を形成しており、チャート上はSTCとエンベロープの組み合わせで逆張り取引がうまく機能しています。上や下に強いトレンドが出ることには注意が必要ですが、当面の間はSTCとエンベロープを活用して、米ドル/円が114~115円の高値圏に達したら売り、107~108円の安値圏に達したら買いといった売買判断で臨むのが効果的といえそうです。

ついに動き始めたカナダ中銀。インフレ加速で積極的に利上げ?

7月、約7年ぶりの利上げを実施したカナダ中央銀行。米国の利上げに追従する格好だが、インフレが加速すれば米国よりも速いスピードで追加利上げを実施する可能性がある。今後の政策金利発表スケジュールに注目だ。

インフレが進行すれば利上げスピードが速まる可能性

為替相場でにわかに注目を集めているのがカナダドルの上昇です。主要先進国通貨の中でもカナダドルは対円での上昇が目立っています。

その背景として、6月にカナダの中央銀行であるカナダ銀行のウィルキンス上級副総裁が利上げを示唆する発言をし、さらに6月末にはポロズ総裁とパターソン副総裁が、すでに利下げは役割を果たしたとの見解を示したことで、カナダ銀行による利上げ開始の可能性が高まったことが挙げられます。

そして7月12日、カナダ銀行は約7年ぶりとなる政策金利の引き上げを実施しました。

下段・上のグラフは米国とカナダの政策金利、カナダの消費者物価指数(前年同月比)です。消費者物価指数はインフレ率の動向を見るもの。カナダの消費者物価指数は金融危機後の2009年にマイナスとなるまで低下した時期もありましたが、直近ではカナダ銀行が目標とする2%前後で推移しています。

カナダの政策金利は米国と連動していますが、米国の政策金利を上回っている時期がいくつかあります。この時期はカナダの消費者物価指数が2%を超えている時期であり、インフレの進行を政策金利の上昇で封じ込めていた時期です。

今後は、カナダ銀行の政策金利発表スケジュールにも注目したほうがよさそうです。今年は9月6日、10月25日、12月6日に政策金利の発表が予定されています。

消費者物価指数の上ブレや米国の追加利上げがあれば、カナダ銀行も利上げに動くと考えられ、短期金利の上昇によるカナダドル高が続く可能性があります。

カナダドル/円の予想レンジですが、9月末には50%の確率で85・2~91・8円のレンジ、10月末には50%の確率で84 ・9~92・3円のレンジを想定します。レンジの下限ではカナダドル買いを検討したいところです。