ネットマネー 2017年11月号より一部を特別公開!

米国株が高値更新を続ける中、上昇するどころか弱含みの展開が続いている日本株。投資家にとっては厳しい状況だ。果たして、年末に向けて相場は上昇するのか、あるいは下がるのか。ここでは投資家必見の株プロ25人による年内の日本株の予測を大公開!

取材・文 新井奈央、昇月リオン 撮影 村越将浩

注目キーワードは、米国の景気循環と減税、そしてFRBの動向か

白川浩道 クレディ・スイス証券

米ドル/円相場はドル安シナリオが優勢か。米国政権の減税策がカギ

現在、米国政権内では通常の予算とは別に、来年の中間選挙を意識した中・低所得者層向けの減税政策が検討されているもようだ。年内に政権側で案をまとめ、年明け以降に議会にかけるという運びになると思われる。そのため、年内は「どんな減税案が出てくるか」という期待感が相場に漂い続ける。これは円安・ドル高要因になるだろう。

しかし、米国景気そのものに関しては楽観はできない。年末に向けて自動車販売の減少が想定されるほか、物価も非常に弱い状態が続いている。さらに、製造業などの生産サイクルも年末にかけて弱含むことが予想されるからだ。「自動車販売の鈍化」「物価の弱さ」「生産の循環的な減速」という3つの要因を考えると、米国景気は減速シナリオのほうが現実的と言わざるをえないだろう。こちらは円高・ドル安の要因となる。また、米国FRB(連邦準備制度理事会)による金融政策については、物価や景気の状態などを考えると、やはり利上げを何度も行なえる状況ではない。

これらを総合して考えると、やはり米ドル/円は若干ではあるものの、円高・ドル安となる可能性が高いだろう。年末で1ドル=107円程度と予想するが、仮に米国政権の減税政策がマーケットの失望を誘うような内容であれば、102円程度まで円高が加速するかもしれない。反対に、ポジティブサプライズを伴うものなら、112円程度で年末を迎えるケースも考えられる。

ちなみに、日銀総裁の後任人事も為替相場に若干の影響を与えそうだ。黒田総裁同様、金融緩和などリフレ政策に積極的な後任が決まれば円安効果が期待できるが、その逆もありうる。ただし、現時点では総裁人事の日程を左右する解散総選挙がいつになるかは予想が難しい。その点では、10月22日の衆議院補欠選挙の結果を注視しておくべきだろう。

日経平均は弱含みの公算。サイバーセキュリティーと女性向け企業に注目!

日本の株式相場については、今後、為替相場の円高圧力が高まりそうなことから、やはり弱含みの展開を想定しておいたほうがよさそうだ。

これまで、米国株式市場が上昇する一方で日本株がほとんど上がらなかった。それはなぜか。要因はいくつかあるが、ひとつは日銀の追加緩和に対する外国人投資家の期待がほぼなくなっていること。もうひとつは、アベノミクスが始まってから約5年が経過し、すでに日本市場自体に成長のイメージが描けなくなっていることだ。この2点は簡単に覆せるものではない。

結局、トランプ政権がよほどサプライズを伴う政策を打ち出してこない限り、少しずつ円高が進み、日経平均株価もジリ安の展開となっていくと思われる。日経平均が2万円を大きく超えて上昇するとは思えず、年内は上値が2万円、下値が1万8500円というレンジ内での推移を予想している。

相場が下落基調となりやすいことを考えると、やはり逆張りの投資はお勧めできない。マーケットの動きを見つつ、あくまで慎重な投資行動を心がけるべきだろう。投資するのであれば、医療や介護、建設といった為替の影響を受けづらい業種への投資がよさそうだ。

さらに言うと、インデックス系の投資よりもテーマ株を中心とした個別銘柄への投資を意識すべきだ。個人的には、サイバーセキュリティー関連に注目している。サイバーアタックのリスクは日を追うごとに高まっており、どんな企業でも無視できなくなっているからだ。また、仮想通貨など電子マネー市場の拡大もセキュリティー分野の需要拡大に直結する。その点では、情報サービスを手がける企業も恩恵を受けるだろう。

長い視点では女性向けの商品やサービスを強みとする企業にも注目しておきたい。昨今、女性の所得が増えており、特に中年女性をターゲットとしたビジネスモデルを持つ企業には成長余地がありそうだ。

中間決算発表では、上方修正企業が続出する可能性も。上昇は10月から

藤本誠之 SBI証券

目先の相場テーマは、新規仮想通貨公開とサイバーセキュリティー

北朝鮮リスクの高まりや、トランプ大統領の強硬発言などを背景にした米国政権の先行き懸念など、外部環境の不安定感が投資家心理を冷え込ませている。株式市場は方向感が定まらず、日経平均も当面、上下に大きく動かないのではないか。ただ、足元では上場企業の決算発表がおおむね良好。きっかけ次第では、リバウンド相場から一気に高値を更新する展開もありそうだ。年内の日経平均想定レンジは1万8800〜2万1000円とみている。

そのきっかけは2つ。ひとつは、10月中旬からの中間決算発表に合わせて業績予想を上方修正する企業が続出しそうなこと。日経平均を1つの企業とみなした場合、EPS(1株当たり利益)は1400円台と最高水準にある中、日経平均は2万円を下回っており、株価には割安感が強い。また、北朝鮮問題などが落ち着けば、次第に株式市場に投資マネーが向かいそうだ。

もうひとつが、ICO(新規仮想通貨公開)だ。未公開企業のテックビューロが8月3日、ICOのプラットフォーム「COMSA(コムサ)」を立ち上げ、10月にはテックビューロ自らがICOで資金調達する。また、東証2部のプレミアムウォーターホールディングスなどもICOの実施を予定している。IPO(新規株式公開)と違って、ICOは取引所の承認も必要なく、スピーディーな資金調達が可能なため、今後、大流行する可能性を秘めている。10月以降にテックビューロなどのICOが成功して仮想通貨市場が大きく上昇すれば、ICOが大きな相場のテーマとなり、関連銘柄にもスポットライトが当たりそうだ。

仮想通貨を使った「COMSA」のICO協議会委員に所属する上場企業やパートナー企業には要注目だ。なかでもジャスダック上場のカイカが最も有力だろう。テックビューロとブロックチェーン(分散型台帳技術)の実証実験や販売などの幅広い分野で協力しており、フィンテック(金融とITの融合)の最先端技術に強みを持っている。超低位株ならではの大幅高も期待できそうだ。

そのほか、長期的な相場テーマとしてはサイバーセキュリティー関連だ。2020年には東京五輪が開催される。世界が注目する五輪はハッカー集団の格好の標的で、万が一被害が出れば国の威信にも関わるだけに、サイバーテロという得体の知れない敵にどう対処するかは大きな課題となってくる。

足元の企業業績は絶好調そのもの。今の日本株はあまりにも安すぎる

清水三津雄 日本アジア証券

期待される年末商戦。日経平均は2万2000円を目指す発射台にある

企業業績など、足元のファンダメンタルズは良好そのもの。にもかかわらず、日本の上場企業の株価は、十分に評価されていない。早晩、水準訂正が起こり、日経平均は年末に向けて2万2000円を目指すのではないか。

内閣府が発表した2017年4〜6月期のGDP(国内総生産)は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・6%増、年率換算では2・5%増とプラス成長となるなどマクロ面は良好。国内の企業業績も第1四半期決算発表を終えた上場企業1582社のうち、約7割に相当する1082社が最終増益を確保している。

問題は米国を中心とした外部環境だ。トランプ政権の政策遂行能力に対する懸念や、北朝鮮の挑発行為に端を発する地政学リスクなど、先行き不透明要因が山積している。これらの問題は、今後も折に触れて相場に冷や水を浴びせる可能性がある。だが投資家としては、そこは絶好の押し目買いの好機と捉えたい。

一方、米国の経済指標はよいものと悪いものが入り交じった〝まだら模様〞だ。ただ、今後は総じて堅調な地合いが続くと考える。懸念要因が徐々 に払拭されてくるにつれて、日本株にとってもポジティブに作用するはずだ。

9月4日現在、日経平均のEPSは1412円と史上最高値水準にある一方、PER(株価収益率)は13・81倍にとどまっている。2013年からのアベノミクス相場での平均PERは15・57倍で、現在の株価水準はかなり割安だ。今後は総合商社や自動車、銀行などの低バリュー(割安)株の底上げが期待できるだろう。また、外部環境が落ち着けば、海外マネーも流入してくる可能性が高い。

一方、季節的要因も今の日経平均の上値を抑えている。2000年1月から今年7月までの日経平均の月別上昇確率では、8月が38・9%、9月が 35・3%とワーストの上位となっているほか、同期間の日経平均の月別平均騰落率でも8月と9月がさえない月となっている(グラフ参照)。

これは長期サマーバケーションによる外国人投資家の不在が原因ともいわれている。ちなみに、現在の日本株市場では、売買シェアの約7割が外国人投資家だ。ただ、例年10月からは外国人投資家の買いが復活し、年末に向けて相場は上昇していくことが多い。特に今年のクリスマス商戦は日米ともに好調となりそうだ。

東証2部やジャスダックの中小型株は、年後半も注目

小川佳紀 岡三証券

キーエンスに見る今どきの投資家が好む2つの特徴とは?

年後半の日本株相場は、秋口まで不安定な展開が続く可能性があるものの、年末にかけては改めて上値を試す展開を想定する。当面は北朝鮮リスクがくすぶり続けるほか、欧米中央銀行の金融政策の動向、米国の債務上限問題など不透明要因が山積みで、上値は重いとみている。 

とりわけ、北朝鮮リスクや米国財政問題などを「口実」に、ヘッジファンドなど短期筋の売買が膨らむ可能性がある点には要注意だ。6月以降、 日本株はボラティリティー(価格変動性)の低い展開が続いてきたが、足元のボラティリティーの高まりが短期筋の売買を促すことが見込まれる。地政学リスクなどを口実とした海外勢の先物売買によって、日経平均が上下に振れの大きい展開となる可能性もありそうだ。

一方で上値が重い中でも、下値も限定的となるだろう。国内企業の業績は堅調であるほか、日本のGDPもしっかりと伸びており、日本株を取り巻くファンダメンタルズは良好といえるからだ。

さて、3月期決算企業の中には4〜6月の業績が好調にもかかわらず、通期業績計画を上方修正する企業は少なかった。ただ、第1四半期時点で業績計画を修正する企業は少ないのは例年のこと。今後、通期計画の上方修正が増えると見込まれる秋の中間決算発表時期から年末にかけて、好業績を改めて評価する局面もあるとみられる。需給面が主導し、相場全体が不安定となる中でも、好業績銘柄については押し目買いの好機になると考えている。

ちなみに、ここ数年の日本株相場は年末高傾向となっている点も支援材料となりそうだ。昨年までの直近5年間において、日経平均の月間平均騰落率は、10月が3・4%、11月が6・0%、12月が3・0%と好調。今年も秋以降、上方修正の発表をきっかけに好業績銘柄が買われそうだ。

個別株を選別するうえでは、上場来高値を更新し続けているキーエンスが参考になる。同社の株価上昇からは2つの側面が見えてくる。1つ目は、 〝質への逃避〞だ。キーエンスは無借金企業で、利益率の高さも同業他社と比べて群を抜く。足元ではこのような「ハイクオリティー銘柄」への資金流入が目立っており、株式市場の中でも質の高い銘柄への評価が続きそうだ。

2つ目は、同社が内包する「省力化・自動化」という息の長いテーマ性への評価だ。相場全体の先行き不透明感が強い中、好業績に加えて中長期視点で評価されるテーマ性を有した個別株がより選別されることになるだろう。

また、年前半は東証2部指数や日経ジャスダック平均の上値追いが続くなど、中小型株が好パフォーマンスを見せた。この傾向は年後半も続くとみている。これらの市場には、〝地に足を着けて〞しっかりと業績を伸ばしている企業も多く、好業績の中小型株にも資金を振り向けたい。

リバウンドでも、日経平均株価で2万1000円が限界かも

村瀬智一 フィスコ

成長産業が大きく変化。フットワークの軽い新興企業に注目

過去の動向から見ても、目先は調整相場に入りやすい傾向にある。とはいえ、秋までの調整を経て、年末に向けては上昇するといった例年通りのトレンド形成になりそうだ。

様子見につながるイベントが続くが、気になるのはトランプ大統領で、メキシコ国境の壁建設に関する予算確保ができなければ、政府機関の閉鎖も辞さないと言及したこと。これを受けて、9月末に向けては「政府閉鎖」といった心配材料が次第に強まり、米国の財政運営への懸念がリスク要因になるだろう。米国の経済指標や金融政策、政権運営への不透明感を背景に模様眺めムードが強まりやすく、9月末に向けては株式ポジション圧縮の流れにも警戒したい。

また、米国のテキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」による被害が拡大している。2009年7月に始まった米国の景気拡大局面が、9年目に突入し、戦後最長となる〝10年〞が視野に入っている中、ハービーによる影響も心配される。しかし、ハービーによる自然災害を受けて、米国政府は債務上限問題では団結せざるをえないのではないか。警戒感がくすぶる中、ギリギリでの予算確保となる可能性が高いとみている。同時期にはドイツの総選挙も行なわれる。安定したメルケル首相が4選をものにするのは確実とみられているが、直近の世界の政治イベントではサプライズが多かったこともあり、様子見要因となりそうだ。

また、国内では解散総選挙も噂されている。元来、来年の12月までに行なうわけだが、市場ではタイミングを逃したとの見方が大勢だ。安倍政権の支持率低下に対して、小池氏の都民ファーストの会の台頭である。ただ、今年の年末に解散総選挙があった場合でも、自民党は議席数を減らすものの、北朝鮮をめぐる地政学リスクに対する政府対応やアベノミクスの効果等を考えると、改めて政策期待が高まるのではないか。

まずは欧米の政治イベントが通過し、10月半ばあたりからは、年末にかけてのリバウンド相場を想定している。ただし、日経平均は2万円どころでのもちあいが長かったため、戻り待ちの売り圧力は強い。需給整理が進んだとしても2万1000円あたりがリミットとみておきたい。

一方で、ジャスダック指数は27年ぶりの高値水準をつけるなど、新興市場の中小型株物色が活発だ。アベノミクス効果や少子高齢化による流れの中、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用した新たなサービスが生まれている。

また、仮想通貨が通貨として認められる流れの中、フィンテック、ブロックチェーン等を手がける企業の動きも熱い。成長産業が大きく変わってきており、新たなサービスを模索してチャレンジするといったフットワークの軽い新興企業への関心はさらに強まりそうだ。