ネットマネー 2017年11月号より一部を特別公開!

じげん

2013年11月の上場以来、メディアに何度も取り上げられ、すでに投資家にも知られた存在であるじげんの平尾社長。あまたある求人サイトの中でもひときわユニークな同社のビジネスモデルが同業他社と決定的に違うのは、どこなのだろうか?

転職〝しそうな〞層ではなく、転職〝したい〞層が集まる

「私たちが目指しているのは、人と情報との距離を小さくし、ゼロにすることです」

「アルバイトEX」「転職EX」といった求人サイトをはじめ、不動産賃貸物件サイト「スモッカ」、中古車情報サイト「中古車EX」等々を運営 するじげん(東京都港区)の平尾丈社長は、同社の目指す方向性をそう表現する。

求人サイトがあまたある中、2013年11月の上場以降、4期連続で会社計画をクリア、2017年3月期は目標の「トリプル25」(営業利益成長率、営業利益率、ROE〈自己資本利益率〉すべて前期比25%アップ)を達成。昨年5月に発表した中期経営計画(2018年3月期〜2020年3月期)でも、引き続き「トリプル25」目標を掲げている。

他の求人サイトとどこが異なるのか。たとえば「転職EX」のサイトを見ると、「マイナビ」「DODA」「キャリコネ」など他の主要転職サイトのロゴがズラリ。これらと提携して各サイトの求人情報をまとめ、一律に掲載している。

「複数の提携先から集めているので、データベースの数自体が多い。それをさらに再構築して、たとえば同じ職種をまとめてお見せしたりしているので利便性が高い。さらにそこで終わらせず、ユーザーが検索すれば一括で閲覧でき、さらに一括してエントリーができるところまで深堀りしているんです。そこが新機軸だったのかなと思っています」

広告収入が主であるところは他のサイトと変わらないが、じげんのそれは成功報酬型だ。

「他のサイトでは広告掲載のタイミングや提携期間に関してお金が発生しますが、私たちの場合は、ユーザーがEXを経由して応募や資料請求の形で他の転職サイトに行けばそれがカウントされます」

そこで必要なのは、「生きたメディアをつくる力」と平尾氏は言う。

「広告代理店やサイトの制作会社は、サイトを制作して納品すれば終わり。でも私たちは、その後にユーザーを連れてきてマーケティングを行ない、サイトで得られるユーザー体験を改善させます。そこまでやって初めてユーザーに応募していただけるんです」

そうした努力の結果、転職サイトであれば不特定多数から年齢・職種などの属性でピックアップする転職〝しそうな〞潜在層ではなく、ズバリ転職〝したい〞顕在層が集まるようになっている。

「単にユーザーの数だけが多いサイトは多いですが、求人などライフイベントと呼ばれる領域は、そのユーザー層を動かすのが難しい。でも私たちのサイトは、来ていただいたユーザーがエントリーする率が非常に高いんです」

大手ポータルサイトより「結果」が出るじげんのサイト

じげんはもともと、平尾氏らがリクルート(現・リクルートホールディングス)在籍時に立ち上げたリクルートの戦略子会社。これまで約70億円かけてサイト運営会社など9社を買収して売り上げ規模を拡大してきた。

「ここ10年、ネット広告市場はリスティング広告(ポータルサイトの検索結果に連動して表示される広告)で進化が止まったままです」と平尾氏は言う。

「人をなかなか集められないからCMをたくさん打つけれども、当たる確率は低い。でもインテント(意図)を読み取るタイミングで広告を出す技術があるので、ちゃんとそこに入っていき、しっかり内製化していきました。すでに大手のポータルサイトより、じげんのほうがコンバージョン(結果)が出ていますよ。それを10年かけて、証明してきました」

不動産のサービスは、求人サービスより発足が数年遅れたが、猛追中だ。

「主力は賃貸。すでに大手ポータルサイトを抜くポジションに到達しており、次の柱として育てていきます。加えて不動産売買領域でもリノベーション物件を扱う『ミノリノ』という不動産売買のサイトを立ち上げました。求人は転職・派遣・アルバイトと勢ぞろいですが、不動産メインはまだ『スモッカ』を始めとする賃貸です。今期から不動産売買を本格的に強化して求人のように〝オールスター〞を勢ぞろいさせます」

ビッグデータを持ち、提携先より集客が巧みで、それを継続できる仕組みがある。しかもそれらすべてを内製する技術を持っている。顕在的なユーザーを集めるプラットフォームとしては、「日本国内でナンバーワン」と平尾氏は胸を張る。

「『集めて動かす』力が強いというのがじげん。動かす側に特化している会社がほとんどないので、私たちにお声がよくかかるというのはそういうことかなと考えています」

ほかにはちょっと見当たらない、ビジネスモデルを構築しているじげんの今後が楽しみだ。

オーデリック

政府は2030年までに白熱灯、蛍光灯からLED(発光ダイオード)の「全取り換え」を目指しているLED(発光ダイオード)。しかし、そんな中、度合いはまだ国内の照明機器の3割程度だという。そんな中、LEDにすでに100%近くシフトし終えた照明器具の専業メーカーがある。その成長戦略は?

創業以来70年以上続く照明器具メーカーの強みとは

「決して安価ではないが、いいものを作ります」―伊藤雅人社長がそう語る照明器具のオーデリック(東京都杉並区)は、独立系の照明器具専業メーカー。家庭用、業務用を合わせて最終製品は1万点ある。

「私たちのような専業メーカーは国内に数社あります。デザイン性や機能性などを深く突っ込みますから、大手さんにはないちょっと違ったデザ インや機能を売りにしています」

2017年3月期は営業利益、純利益ともに2期連続で過去最高を更新した。

その原動力は白熱灯、蛍光灯に比べて寿命が長く、消費電力が少ないLEDの普及だ。国内の全照明器具におけるLED照明の割合を「2020年までにフローベースで100%、2030年にはストックベースでも100%」とする政府の方針もあって、着実な成長が期待できる。 

同社も白熱灯、蛍光灯からシフトして住宅用の売り上げではすでに100%、それ以外を含めても96%がLEDだ。

「内製が7割、2割が中小の協力会社さん、1割が海外から。いずれも当社の設計思想のもとで作られています」

同社は戦後まもなく創業。米軍の放出物資、蛍光管を使って照明器具を作り始めた。

「戦後の混乱の中、事業として注目したのが蛍光灯照明器具でした」

白熱灯が主体の時期も、省エネがうたわれて蛍光灯が主体だった時期もあったという。

「照明は建築と切り離せません。天井に吹き抜けができたり、間接照明が付いたりと、どんどん変わる住宅の様式に最適化した照明器具を新しく作ります。光自体にも光学性能というものがあります。反射板をどういう構造にすればどういうふうに光が照射されるか、といったことを約70年 間研究しています」

こうした照明器具メーカーとしてのこだわりは、LEDにも反映されている。

「かつてLEDは高価でした。近年は生産量が増え、小売店の店頭やウェブサイトなどで低価格のLED電球が流通しています。低価格は消費者の皆さんにとって歓迎すべきことですが、照明メーカー以外が手がけたLED電球の中には、暗くて実用的でないものや、ちらつきが起こってしまうもの、色合いが不適切なものなど粗悪品と呼ぶほかないものも存在します」

7年ほど前、市場に流通し始めたLED照明には、暗いうえに品質面で問題のあるものも多く、LED照明に替えたことで使用不良が起ったという事例が報じられたことも。普及拡大の阻害要因として同社も憂慮していたという。

LED照明は国内の照明器具のまだ3割程度

そんな国内市場の普及の転機となったのは、2011年3月の東日本大震災。福島第1原発の事故が、電力消費の量を削れるLEDへの切り替えを促した。そうした時期を経て、現在のようなLEDの明るい光が認知されるようになった。

「照明器具は年間約7000万台出荷される。日本中に全部でどれだけあるかはなかなか把握できないが、私たちは10億台、それが約15年ですべ て入れ替わるとみています。ここ5年で出始めたLED照明は、国内の照明器具のまだ3割程度。それが徐々にこれから変わっていく、変わる余地があるとみています」

粗悪品も変わらず流通する中、どう戦っていくのか。

「光が当たったときにきれいに見える組み合わせを考えて、きちんとした形で出荷しているのが私たちの大きな特色です。『オーデリックなら大丈夫』と思っていただけるとうれしいし、ありがたい」

そもそも同社の〝庭〞である家庭用の照明器具市場で、LEDへ移行する恩恵を享受できるのは大きい。

「私たちは大手家電メーカーが作った白熱灯や蛍光灯を仕入れ、それに合った光を効果的に導き出せる器具をデザインしてきました。それがLEDにかわり、小さなLEDチップ一粒一粒をどう配置し、どのように色をつければよいか、さらには光そのものの質も自らつくり出してきました」

これまで蓄積してきた経験が存分に生かせそうだ。

「LEDの特性を生かし、コンパクトでデザイン性も高い照明器具を作っていきます。4万時間、10年使用していただきたい」

現在の同社製品の目玉は、 タブレットやスマホで操作できるコネクテッドライティングというシステムだという。

「光の三原色をコントロールし、オフィスや家庭内のLEDの明るさや色を一斉に変えることができます」

美麗な三原色を出すのにコストはかかるが、このシステムに限らず、既成の照明器具との差別化をすすめ、安かろう悪かろうの市場と一線を画す取り組みが、今後の同社の成長を促すことになりそうだ。

取材・文●西川修一 撮影●石橋素幸