ネットマネー 2017年11月号より一部を特別公開!

今年上半期で国籍を返上した米国人は過去最高だった昨年を上回る勢いだ。
大体が税制を嫌ってのことなのだが、今後は異なる理由が加わりそうだ。
それは、攻撃的な言動を繰り返し、世論を分断する「トランプ大統領が嫌い」というもの。
トランプ政権の支持率は低下の一途をたどっているが、実はウォール街でも同様だ。

米国から逃げ出したい―。

そんな冗談ともつかぬニューヨーカーの会話を小耳に挟む頻度が増えている。

今年上半期で国籍を返上した米国人は3000人超で、過去最高だった昨年を上回る勢いだ。大体が税制を嫌ってのことなのだが、今後は異なる理由が加わりそうだ。

「他国を挑発する外交姿勢では戦争が起こりかねない」「不謹慎な発言が多く、子供への教育に悪い」というのが、「米国を逃げ出したい」と語る友人らの説明だ。

攻撃的な言動を繰り返し、世論を分断するトランプ大統領を嫌っているのである。とどめは、最近起きた記者会見での衝突だ。

8月15日、ニューヨーク。住居としているトランプタワーでトランプ氏が社会資本投資の規制を緩和する発表に臨んだ。記者との質疑応答の開始早々、前の週に起きた米国南部バージニア州シャーロッツビルの事件に質問が集中した。白人至上主義の団体と反対左派が衝突し、反対左派の女性が死亡した事件である。

なんと―トランプ氏は言うに事欠いて、「両方の側に責任がある」と言ってしまった。記者に突っ込まれると今度は「偽ニュース野郎」と逆上。大荒れの会見になった。

日本ではそこまで大きく報道されなかったようだが、米国では大いに問題視された。

ヘイトスピーチ(増悪表現)を強く制限する欧州と比べて、「言論の自由」でおおらかな米国ではあるが、白人至上主義の秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)やネオナチに対して、人々は拒絶反応を示す。

にもかかわらず、トランプ氏は「けんか両成敗」の見解を示したのだ。野党の民主党やメディアだけではなく、与党・共和党からも批判が出て、全米を揺るがす「不謹慎発言」とみなされてしまった。

米国ではトランプ政権の求心力が低下している。支持率も低下の一途をたどっているが、実はウォール街でも同様だ。

トランプ政権の経済政策の肝は、社会資本投資、規制緩和に減税。主に、金融、エネルギー、製造業といった「オールドエコノミー」がその享受者。オールドエコノミーが中核を成すニューヨーク・ダウ平均株価(以下、NYダウ)の推移を見ればよい。昨年11月の米国大統領選挙投票日以降は19%の上昇(8月24日現在)。これは、世界の大型株で構成される世界株式指数と米国の「ニューエコノミー」企業で構成されるナスダック総合指数をそれぞれ4ポイント上回る。

だが、大統領就任の1月下旬からだと、NYダウの上昇率は世界株式指数を1ポイント上回るだけで、ナスダック総合指数比では2ポイント下回った。

白人至上主義者に対する批判姿勢を打ち出せないトランプ氏に嫌気がさして、企業の首脳が相次いでトランプ氏の助言役から降りた。トランプ氏は米国企業の首脳らで構成する2つの諮問組織の解散を決めたが、こうしてまた政策期待が剝がれていくことになるわけである。

撮影●村越将浩