ネットマネー 2017年11月号より一部を特別公開!

日本株相場はさえない状況が続いているが、海外に目を向ければ、好調な経済に支えられて株式相場が上昇している国・地域は数多くある。今月も外国株投資に関するホットな話題を盛りだくさんにお届けします!

取材・文●渡辺賢一

米国株は横ばい。国有企業の民営化でブラジル株が上伸

8月の外国株相場は、米国株が北朝鮮によるミサイル実験やトランプ政権による政治的混乱で伸び悩む一方、ブラジル株は大幅上伸するなど、まちまちの展開となった。

米国のNYダウは、8月の騰落率が0・3%とほぼ横ばい。7月末から8月7日にかけては9営業日連続で終値ベースの最高値を更新し、8月2日には史上初の2万2000ドル台をつけた。

しかし、トランプ大統領が8日、核開発やミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対し「世界が目にしたようなことのない炎と怒りに直面することになる」と警告。これを受けて北朝鮮が米軍基地のあるグアム島周辺にミサイルを発射すると脅しをかけたことなどから、地政学リスクを警戒する売りが強まり、NYダウは2万1000ドル台に押し戻された。閣僚やブレーンが相次いで辞任するなど、トランプ政権の混迷が続いていることも米国株の動きを鈍らせた。

一方、中国株は、秋に予定される中国共産党大会に向けて経済が勢いを増すとの期待から続伸。中国本土株の主要インデックスである上海総合指数は8月に2・7%、香港のハンセン指数は2・4%と、上昇した。月間のハンセン指数の上昇は8カ月連続。

東南アジアでは、ベトナム株の主要インデックスであるVN指数が8月初めに9年ぶりの高値を更新。タイでは8月28日、インラック前首相が 職務怠慢の罪に問われた裁判の判決を前に逃亡したことが政治的緊張を緩和すると予想され、SET指数が翌29日にかけて大幅上伸した。

ブラジル株は、収賄容疑が持ち上がったテメル大統領への裁判が行なわれない公算が強まり、同大統領が進める国営企業の民営化がブラジル経済にプラスに作用するとの見通しが強まったことから上昇。ボベスパ指数は8月22日に節目の7万ポイントを超えた。

今月の注目国 輸出好調で成長続くタイ株に上昇期待!

輸出好調で景気も良好。低インフレ状態が続くタイの経済事情とは

タイ経済が絶好調だ。直近の2017年第2四半期(4〜6月)の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比3・7%。2016年第4四半期の同3・0%、2017年第1四半期の同3・3%から伸び率が拡大している。

「好調な輸出がタイ経済の成長を押し上げています。もともとタイは外需依存度の高い経済構造の国ですが、このところの世界的な半導体需要の拡大や、10月に5年に1度の中国共産党大会を控える中国向けの輸出が増加していることなどが追い風となって、経済成長に拍車がかかっているのです」と語るのは、〝新興国株投資のカリスマ〞としておなじみの戸松信博さん。

AI(人工知能)やビッグデータ解析といった新たなテクノロジーの普及とともに、世界の半導体需要は急拡大。2000年のITバブル期以来となる活況を呈している。半導体など電子部品を主な輸出品目のひとつとするタイにとっては絶好の商機到来だ。

また、共産党大会に向けて国内経済を徐々に加速させている中国は、輸入が大きく伸びている状況だ。これらの要因がタイ経済の成長にプラスに作用しているようだ。

「一般に経済が好調なら物価も上昇するはずですが、タイでは低インフレの状況が続いています。エネルギー資源が乏しく、ほとんどを輸入しているタイでは原油高がインフレ要因となりやすいのですが、原油価格が一向に上がらない状況が続いていることが幸いしているようです。そのため、タイの中央銀行は景気見通しを上方修正する一方、政策金利については18会合連続で1・5%に据え置く決定を行なっています。このまま低金利が続けば、好調な経済に支えられてタイ株相場が一段高となる可能性も高いでしょう」と戸松さんはみる。

タイ株相場は年初来、主要インデックスであるSET指数が1550〜1600ポイントの高値ボックス圏で推移していたが、8月の終わりに上抜けしたところだ。

そうした強気の見通しの中、戸松さんが注目する銘柄は、タイ最大手の銀行であるバンコク銀行と大手不動産デベロッパーのスパライだ。

「輸出や経済の好調が続けば、金融機関はストレートに恩恵を受けるはず。バンコク銀行の株価水準は、ほかの銀行と比べると低めですが、これは近年、大きく成長してきた個人や中小企業向けの貸し出しの比率が低いからです。しかし、今後は輸出やインフラ開発などに関わる大手企業の資金需要が拡大するので、安値で放置されてきたバンコク銀行が見直されるのではないでしょうか」(戸松さん)

一方のスパライは、「バンコクのほか、全国の主要都市で主に宅地を開発しています。タイの不動産市況はまだ強くありませんが、経済成長の加速とともに不動産取引の活発化が見込め、業績が拡大しそうです」と戸松さんは語る。

米国株を買わないのは、なぜですか?

高級ジュエリーとして世界各国に店舗を展開し、日本でもなじみのあるティファニー。一方の日本は1950年設立の老舗、 4°Cホールディングス。企業規模は違いますが比較してみました。

撮影●村越将浩

第39回 日米の老舗宝飾メーカーで対決

日本の宝飾メーカー4°Cは1950年に会社設立の老舗銘柄

いつか取り上げたいと考えていた米国のティファニー。企業規模がかなり違うのですが、日本の4°Cホールディングスと比較してみました。私自身どちらも手に取ったことがあり、どちらも好きなブランドです。

まずティファニーといえば、高級ジュエリーの代名詞で、何世代にもわたって愛され続け、世界で20カ国に300以上の店舗を展開しています。日本でも有名ですね。

4°Cも日本では知名度があります。1950年に設立されて上場は1972年12月と歴史のある企業です。若年層をターゲットにしているよう にも見えますが、大人の女性向けなどのブランドもそろえて、幅広く展開しています。

さて、チャート上ではティファニーのほうが勢いがありファンダメンタル指標からも、ティファニーのほうが割高ですが、ROE(自己資本利益率)、配当利回り、時価総額などから、ティファニーに軍配が上がります。

米国株にはもっとたくさんの夢のある銘柄が存在し、今後も期待ができます。

今では日本人でもネットを通じて気軽に投資ができますので是非、米国株投資を始めてはいかがでしょうか。

スパイシ~・マーケットの歩き方

楽天証券 土信田雅之

中国の〝ゾンビ企業〞や〝腐敗温床〞につながる共産党による経営介入

お盆休み明けの日本経済新聞朝刊に「中国企業において中国共産党の経営介入が進んでいる」との記事が掲載されていました。

具体的には、社内に党の地位を認める組織を設立し、重大な決定事項の際には、事前にその組織の意見を伺い、経営トップは組織のトップを兼務するなどの内容を定款内に明記する企業が増えている、という。日経の調査によれば、中国の証券取引所(上海と深セン)に上場する約3300社のうち、約1割にあたる企業の定款に内容変更の形跡があったようです。

この10月の中国共産党の党大会を前に、習近平(中国共産党中央委員会総書記)体制の基盤強化を図る狙いがあると思われます。

しかし、中国企業と合弁事業を行なう外資企業にとっては、経営の意思決定において、中国共産党の〝意向〞に振り回されるリスクが高まることになりそうです。

市場の改革開放と中国企業の構造改革は、現在の中国五カ年計画において盛り込まれているため、その計画とは逆の動きになっている印象です。

実は、中国企業の改革をめぐる歴史は今に始まったものではないのです。かつて、中国企業は原則すべて国営でしたが、当時の最高指導者の一人、鄧小平氏の指導体制の下、1978年12月に開催された中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議で「改革開放」政策が提出され、その後開始された中国国内体制の改革および、対外開放政策への転換が決定的となったといわれます。

改革開放の進展で、企業の所有権は依然として国が有するものの、経営権は企業に移すことで、「国営企業」は「国有企業」と称されること になりました。そして、1990年代後半の朱鎔基(元国務院総理)氏による痛みを伴う改革によって国有企業の淘汰が進んでいくことに......。

さらに、2001年にはWTO(世界貿易機関)加盟に成功し、国有企業は国際競争力を高め、民営化の方向を加速していきました。

ところが、最高指導者、江沢民(元中国共産党中央委員会総書記)体制時に改革の流れが滞ります。国有企業の人事に中国共産党が口を挟み、多くの行政部門を関与させることになりました。これが今日まで存在する〝ゾンビ企業〞や〝腐敗の温床〞につながっているといわれます。

この状況は、胡錦濤(元中国共産党中央委員会総書記)体制になっても思うように改善しませんでした。しかし、現在の習近平体制になって、 「虎もハエも同時に叩く」という激しい反腐敗運動が行なわれ、そのメスは企業改革にも入ることになります。

足元の中国企業に対する中国共産党の経営介入は、「企業内にくすぶる腐敗の温床を厳しく監督するため」というのが大義名分かと思われますが、新たな腐敗が生じてしまう可能性もあり、少なくとも民営化の進展や、グローバルな市場のルールにのっとった改革につながるかは不透明なままです。

中国の企業改革は、いまだ〝道半ば〞といえそうです。