ネットマネー 2017年11月号より一部を特別公開!

トランプ大統領によると、次期FRB議長の指名は年末までに行なうとしている。イエレン議長の再任の可能性は小さいとされる中、米ドル/円は今後どのような動きをするのか?

次期FRB議長は誰に?年末までの100日間が焦点

イエレン氏が推し進めた金融正常化への道筋が壊される可能性も

「イエレンは2008年危機後の銀行規制を堅持」―。これは8月26日の米国メディアの見出しを直訳したものだ。

FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長は、先の経済シンポジウム(ジャクソンホール会合)でトランプ政権が掲げる金融規制の緩和、つまり銀行の自己勘定取引を制限するボルカールールを公然と批判したのである。

そもそもトランプ政権は、雇用創出、輸出促進とした米国第一主義を掲げている。大規模な減税や拡張的な財政政策、インフラ投資拡大を目指しており、企業活動の阻害やドル上昇につながる利上げは 望んでいない。FRBに対しては、低金利政策の維持を求める姿勢なのである。

金融政策正常化を目指すイエレン議長とトランプ大統領の対立軸は明確であり、来年2月3日で任期満了のイエレン議長の再任の可能性は一段と低下したのではないか。

次期FRB議長の指名時期に関して「年末までのどこかの時点」と明言していたトランプ大統領だが、すでに100日程度しか猶予はない。次期議長は政治政策と金融政策の整合性、決定に至るプロセスも理解している人物が望ましそうだ。市場対話も含めた慎重な舵取りができる有識者が求められる。

教科書的には、米国10年債利回りなどの長期金利は、利上げ見通しが強まれば上昇に転ずる。対して、日銀のイールドカーブコントロール(長短金利操作)で円の長期金利上昇が抑制されていることから、日米金利差拡大によって円安圧力の上昇が見込まれる。

しかし、次期FRB議長がトランプ政権の考え方に親和的ならば、経済成長やインフレ率が徐々に上昇しても、利上げ抑制や先送りを迫られる可能性もありそうだ。

米ドル/円相場は、ここから年末までの約100日間が焦点となる。次期FRB議長の具体的な選任場面は、米ドル/円において重要な局面となりそうだ。

ボックス上限突破のユーロ/米ドルは追随買いで勝負!

フランス大統領選挙では波乱が起こらず、ECBがテーパリング開始をにおわせている今、ユーロ高トレンドに乗る戦略が有効。なかでも狙い目はユーロ/米ドル!

今月の先読み先生
カブドットコム証券 投資情報室 投資アナリスト
藤井明代さん AKIYO FUJII
株主優待からテクニカルまで幅広い分野の情報発信で人気。ラジオやテレビなどレギュラー出演多数。著書『勝てる!「優待株」投資』(幻冬社)。

2年半続いた底値圏を完全に脱し、1ユーロ=1・25ドルを目指す!?

今年のFX市場で一番注目され、上昇を続ける通貨の一つがユーロです。日本のFX投資家は日本円をベースにした通貨ペアに注目しがちですが、世界で最も取引量が多いのはユーロ/米ドル。絶えずユーロとドルの力関係に気を配ることが、世界通貨の流れを読む意味でもとても重要です。

そんなユーロ/米ドルは昨年末、トランプ大統領誕生によるドル高期待から一時1ユーロ=1ドルを意識した水準までユーロ安が進みました。ところが、今年に入って状況は一変。下段上の図は3月末からのユーロ/米ドルの日足チャートですが、大きく見て2つのステージを経て見事なユーロ高トレンドが続いています。

第1ステージは、4月上旬を底に6月14日の米国FOMC(連邦公開市場委員会)で4度目の利上げが決まるまでの約2カ月間。米国ではFRB (連邦準備制度理事会)が3月に利上げをした後、その材料出尽くし感から米国長期金利が低下。半面、欧州ではフランス大統領選挙で、懸念されたユーロ離脱派のルペン候補が落選し、欧州金利が反発上昇したことがユーロ高の原動力になりました。

第2ステージは6月下旬以降で、ECB(欧州中央銀行)がこれまでの量的金融緩和策からテーパリング(量的緩和の段階的縮小)に向かうのでは、という市場観測が背景にあります。7月のECB理事会では政策や声明文に変更はなかったものの、金融政策転換に対する期待値は依然として高いままで、今後もユーロ高を意識した投資戦略が重要になりそうです。

具体的には約2年半続いたレンジ相場を上抜けし、1ユーロ=1・20〜1・25ドル近辺まで上昇するシナリオが濃厚。2017年末に向けては、全面的なユーロ高トレンドに乗るのが最善のFX投資法といえるかもしれません。

通商交渉の動向には注視が必要だが、高金利は魅力

トランプ米国大統領の登場で売られたメキシコペソは、政策金利の引き上げなどで上昇トレンドに。米国との貿易交渉次第では下落のリスクはあるが、政策金利7%の高金利は魅力的だ。

今月の先読み先生
eワラント証券 投資情報室長
小野田 慎 さん MAKOTO ONODA
イボットソン・アソシエイツ、ゴールドマン・サックス証券を経て現職。ポートフォリオ構築の専門家としての経験を生かし、幅広い資産の分析を行なう。

高金利は魅力だが、リスクが高い点には注意が必要

昨年のメキシコペソ相場は、 米国大統領選挙でトランプ氏が勝利したことから急落する局面がありました。これはトランプ大統領がNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しや、メキシコとの国境における壁の建設、メキシコからの移民を厳しく制限する方針を示したことによる影響です。移民への取り締まりは強化されましたが、これまでのところNAFTAの内容に大きな変更はなく、国境の壁建設の実現性も低下したことから、メキシコペソ相場は上昇傾向にあります。

メキシコペソの上昇に弾みをつけたのは金融政策です。中央銀行であるメキシコ銀行が今年6月に今年4回目となる政策金利の引き上げを行ない、政策金利は7・0%に。国内物価の上昇や米国の利上げによる米ドル高から通貨ペソの下落を防衛するのが目的でしょう。今後は積極的な利上げは行なわれず、経済状況を見極めてから政策金利を判断するものと考えられます。

メキシコペソにとっての大きなリスクは主に2つあります。1つ目は原油相場。メキシコは産油国であり、原油価格が一段安となるとメキシコペソにとっての悪材料となります。2つ目は8月中旬からのNAFTAの再交渉です。メキシコ経済は米国への輸出に依存する体質になっており、特に自動車やテレビなどの工業製品が大きな輸出品目です。米国が保護主義的な主張を強めてメキシコにとって不利な内容となると、メキシコ経済の先行き不透明感からメキシコペソの売り圧力が高まると考えられます。

メキシコペソ/円の予想レンジですが、10月末には50%の確率で5・93〜6・45円のレンジ、11月末には50%の確率で5・89〜6・50円のレンジを想定します。NAFTA再交渉においてメキシコにとって不利な条件とならない見通しが立てば、レンジの下限ではメキシコペソ買いを検討したいところです。