中国経済の先行き懸念などもあり、原油価格が再び下落しています。しかし、この原油安は私たちにとって悪いことなのでしょうか? 実は、原油価格の下落は私たちの賃金の上昇を支えているのです。

今月の知りたがりテーマ 長引く原油安で賃金が上昇傾向に

崔 真淑
崔 真淑 Masumi Sai
Good News and Companies 代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。現在は、日経CNBC経済解説部のコメンテーターとしても活躍している

この原稿を書いているのは8月下旬。日経平均が1万9000円を割り込んだ日です。中国株暴落がきっかけとなり、世界同時株安の様相が強まっています。これを受けて、中国政府がとった株価対策は、年金基金に最大3割まで株式運用を認めるというもの。しかし、投資家の不安は収まらず、パニック心理が浮き彫りとなっています。

さて、このパニックが明けた後、資本市場は何に注目するのでしょうか? やはり、米国の利上げでしょう。もうひとつは、実体経済の動向です。注目すべきは、原油価格の下落による日本経済への経済効果。特に、私たちの賃金と、それに伴う内需企業への影響です。

まずは、物価の伸びに賃金が追いついているかを見るための指標「実質賃金指数」を見てみましょう。2013年1月から2015年6月で、約8%低下しています。かなりざっくり言うと、年収400万円の人は、約30万円目減りしたことを示しています。

これは、円安による輸入価格上昇等が影響しています。しかし、ここ数カ月は、原油価格の急落により、実質賃金は上向く兆しを示しています。

実施賃金のカギを握るのは「労働生産性」といわれる、従業員と企業の稼ぐ力。もうひとつが、交易条件の改善といわれています。これは貿易利益が改善し、国全体の稼ぎが上昇することを示しています。たとえば、輸入価格の上昇に、輸出価格の上昇が追いつかないとします。これは交易条件の悪化を意味します。

この悪化した利益分は海外への流出を意味するのです。

結果、その負担は国内主体の誰かが負うことになり、私たちの賃金の減少や、企業利益を減少させる場合があります。しかし、足元では原油価格の下落によって輸入コストが低下し、交易条件が改善しています。マクロな視点で見た、私たちの賃金動向は改善しつつあるのです。つまり、アベノミクスによる国策でなく、原油安の影響によるところが大きいのです。

今後の原油生産動向を見ると過剰供給は続きそうですし、原油価格の停滞が長引き、賃金の改善も続きそうです。そうなると、それに伴う消費財、スーパーといった内需企業にとっては追い風の環境が続きます。ピンチはチャンス。こんなときほど、前向きに日本経済のよいところを探してみてはいかがでしょうか?

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