東電の際と同様、「大きすぎてつぶせない…」と受け取れる形で推移しているが、こうした判断にこそ「信」があるということが大切で、さもないと「信なくんば立たず」という故事そのものの事態に至ってしまうだろう。

イメージ撮影●村越将浩

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「不適切会計ではなく、明らかに粉飾といえるレベル」と指摘されている教授もいますが、今回の東芝不正会計問題につき、ツイッター等で私にコメントを求める向きがありました。経営トップが現場を追い込んでいた、また上司に逆らえない企業風土があったなど、当該事件が生じた背景に関してさまざまな指摘がなされていますが、私としては「なぜ、ここまでやったのかなぁ」というのが率直な感想です。

証券取引等監視委員会は今後、東芝の訂正有価証券報告書などを調べ、重大な虚偽記載があったと認定すれば課徴金を科すよう金融庁に勧告する方針だとも報じられています。経営トップが関与した不適切会計の期間中に3330億円の公募増資を含め1兆円も資本市場で調達していたことから考えても、今回のケースでの課徴金処分は妥当かと思われます。

ただし各種報道にある通り、仮に東芝株が上場廃止を免れるとすれば、その一部で脈々と不正が受け継がれ事件化したオリンパスが上場廃止にならなかったのと同様、私は理解に苦しみます。9年前のライブドア事件を例に考えてみても、ライブドア株は当然ながら上場廃止になり経営陣が逮捕までされたわけで、いったいいかなる根拠でもって上場廃止の是非が決せられたり、刑事事件化したりするのでしょうか。

腑に落ちないのは、オリンパスの上場維持に限った話ではありません。

法的整理を行なわなかったがために、その後、深刻化し続けた東電破綻処理問題は〝TooBigtoFail?〝(大きすぎてつぶせない)ということでありましたが、東芝の件も同様に世界的企業で多くの株主がいるから上場廃止はできないと取れる形に、今のところなっているように思われます。

こうした判断の公平公正はどこにあるのでしょうか。また上場維持の判断基準はいかなるものなのでしょうか。「大きすぎる」「日本を代表する国際的な企業」、だから上場維持という判断で本当によいのか―。

こうした判断にこそ「信」があるということが大切で、さもないと「信なくんば立たず」(人民の信義がなくては国家も社会も成り立たない)という故事そのものの事態に至ってしまうのではないでしょうか。

経営トップらを含めた組織的な関与が断定され、前述のごとく異常ともいえる企業風土が醸成されてきた事実に鑑みれば、それを生み出してきた責任はOBといえども指摘されねばなりません。そういう意味では、たとえば東芝の社長、会長を務め今も相談役である西室泰三氏が過去、日本経団連の要職に就かれ、現在、日本郵政のトップであることも指摘されるべきだと考えています。

東芝のトップとなられた室町正志氏は7月初め、西室氏のところを訪ねられ人事につき話されたとも報じられていましたが、いずれにしろこの際すべての病巣を摘出すべく、これまでをきちっと清算し総括したうえで、再生を目指さねばならない話だと思っています。ほかにも、今後、金融庁が東芝の会計監査人である新日本監査法人の責任追及と、現在の監査制度改善を求めるかは注視する必要がありましょう。監査法人の不祥事としての側面に対する踏み込み不足が各所で指摘された「第三者委員会調査報告書」を受け、これまでさまざまな識者による見方が数多く報じられてきました。

識者によっては、「今回の問題はすべてが日常的な一般的業務に関する会計処理であり、それに対して監査法人がどのような評価をしたかが一番重要だが、そこが初めから調査の対象外のため、何のための調査報告書なのかわからない」という見解を持たれる方もいます。

さらに、2007年に東芝とも関係の深い伝統企業IHIで、海外のプラント事業をめぐって工事進行基準をめぐる不適切会計の問題が表面化し、300億円を超える過年度決算訂正に追い込まれて有価証券報告書虚偽記載で課徴金納付命令を受けた際の会計監査人も新日本監査法人であり、同じ監査法人が会計監査人を務める東芝においてIHIで過去に起きたのとほとんど同様の事態が発生しているのに、何ら気づかず問題も指摘できないなどということは理解できないとも述べられています。

そして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で東芝に科す課徴金の額がIHIの過去最大額約16億円と比べていかほどになるか、ライブドア事件等と同様に経営陣に刑事罰が下されたり株主代表訴訟の提起がなされるかは、重要なポイントであります。

また、今回の問題に関してJPX(日本取引所グループ)は早々と上場維持が当たり前であるかのように動いてきているわけですが、仮に東芝株が上場廃止を免れるならば、過去の事例と照らし合わせていかなる理由でそうなのか、どういう経緯・根拠でもってその是非が決せられたか、その判断の公平公正の所在はいったいどこに求められるか―などが誰でも理解できるよう説明責任を負い、きちんとした見解を出すべきでしょう。

北尾吉孝
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北尾吉孝
きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。
74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。
78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95年にソフトバンク入社、常務取締役。
99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。
現在、インターネット総合金融グループを形成する
SBIホールディングスの代表取締役執行役員社長。
『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。「facebook」にてブログを執筆中。