公的年金の積極的な日本株買いに加えて、企業による自社株買いが急増、日本株市場が活況を呈しています。自社株買いは、高ROEを実現するためのひとつの手段。今後もますます増えていきそうです。

今月の知りたがりテーマ 日本政府が推進する高ROE経営とは?

崔 真淑
崔 真淑 Masumi Sai
Good News and Companies 代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。現在は、日経CNBC経済解説部のコメンテーターとしても活躍している

今年に入ってからの日本の株式市場は、米国株式市場との相関が薄れています。米国株が下落しても、日本株が下げない日が増えているのです。理由は「チーム公的資金」といわれる日本銀行や、国民年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本株を買い支えていること。 加えて、 公的資金と同等規模の「自社株買い」が積極的に行なわれていることが挙げられます。

企業が自社株買いに積極的な理由は、アベノミクスが資本市場改革のひとつとして、株主が要求するリターンに応えるように促しているから。具体的には、 「欧米並みの15~20%のROE(自己資本利益 率)を目指しなさい」ということなのです。

こうしたROEを意識した経営を促進するために、経済産業省の傘下で、あるレポートが作られました。 「伊藤レポート」といわれる、一橋大学大学院の伊藤邦雄教授をリーダーに、株主と会社の対話を促すためのレポートです。

このレポートでは、日本企業の「内部留保」が欧米よりも高いことにフォーカスを当てています。内部留保とは、当期純利益から配当などが支払われた残額。内部留保は基本的に100%未満の配当性向を取る限り、積み上がっていきます。そして、その積み上がった内部留保を現預金だけに置いておくのでなく、新しい投資に振り分けて企業価値向上のために使うか、それができないならば株主還元を行なうかの選択を上場企業は迫られています。

しかし、これまで日本企業はもしもに備えて現預金を貯め込んでいるだけで、株主はおろか新しい投資にも踏み出せない期間が長引いていました。 「ROE経営」を促すことは、企業にやみくもに株主還元を迫ることではなく、内部留保を有効活用して企業価値を向上させ、日本経済を上向かせることでもあるのです。

そうはいっても、有望な投資先はなかなかありません。そう判断している企業が多いこともあり、まずは現預金を自社株買いに充てる企業が多いようです。

伊藤レポートでは、上場企業は最低でも8%超のROEを達成すべきとしていますが、この1年間でこれを達成できた企業が増えてきました。今後は、投資家の求めるROE水準が切り上がり、さらなる株主還元への動きが加速しそうな気配です。

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